新型コロナウイルス感染症の流行拡大が打撃を与えたインドネシアの航空業界の回復について、専門家はコロナ禍前の水準に戻るのは、早くても2~3年後になるとの見方を示している。大学の調査では、新型コロナのワクチンが年内に接種可能になれば、2年で回復できるとの予測が出ている。航空業界関係者からは国内線利用の需要が回復をけん引するが、国際線の回復はそれより1年長引くとみている。
ジャカルタ・ポストが伝えたインドネシア大学の調査は、航空業界が楽観的なV字型回復を遂げた場合、2021年末までに航空各社の収益が例年の75%程度まで改善するとした。悲観的なL字型成長の場合は、収益を持続的に圧迫し、同期の収益が同40%程度にとどまるとの見方を示した。
同大学による応用一般均衡モデル(CGE)によるシミュレーションでは、新型コロナウイルス感染症の流行拡大によって航空産業の全体の成長率は前年比で6.45%減とはじき出された。ヘリ・ファスラーマン研究員は、新型コロナの影響を緩和するために、航空産業へさらなる財政支援が必要だと強調した。
同研究員は、「政府はいくつもの支援策を打ち出しているものの、航空業界への直接的な支援策は国営ガルーダ・インドネシア航空に対する8兆5,000億ルピア(約600億円)の資金注入だけだ」と指摘。シンガポールやマレーシアなどで導入されている燃料税や空港利用料の削減、業界への債務再編などをインドネシア政府も実施する必要があると説明した。
■利用客は「様子見」
これに対して、国営空港運営会社アンカサ・プラ(AP)1、AP2はいずれも利用客数の回復が遅れていることから、国内線、国際線ともに業績改善にはさらに時間がかかるとの見方を示している。
AP1は先ごろ実施した調査で、対象となった500人のうち、84%が航空機の利用について、新型コロナへの感染懸念から「しばらく様子見」と回答していた。
ビスニス・インドネシアによると、AP2のムハンマド・アワルディン社長は、今年の国内線、国際線の搭乗客数は通年で計7,000万人を超えることはないと指摘。特に国際線についてはコロナ禍によって多大な打撃を受け、例年の13%程度にとどまるとの見方を示している。
AP1のハンディ・ヘリユディタワン副社長も、航空便の乗客がコロナ禍前の水準に戻るのは23年からになると予測。しばらくは国内旅客が航空業界の収益をけん引すると話した。
■国際線利用者、渡航先政府が左右
ガルーダ・インドネシア航空のイルファン社長は、業界の回復について、早くても22年だと予測。国際線については「渡航先の国の政策によって左右される」として、同社だけでは回復が難しい現状を吐露した。同社は国内線と貨物便を収益の柱に据えている。
ジャカルタで活動する日系旅行業界関係者は28日、NNAの電話取材に対し「日本で10月以降、中長期滞在者の入国を再開するとしているが、条件も厳しく、利用者の意識もそこまで回復していない。これが直ちにインドネシアからの国際線利用者の拡大につながるとは思えない」と語った。
さらに、「観光客の移動については依然として日本をはじめ各国・地域が厳しく制限していることから、日系航空会社の利用客数の回復もしばらく時間がかかるだろう」と話し、当面は国際貨物便の輸送が収益を支えるとの見方を示した。
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